『Project Nim』ニムの感動の旅 : 人間に翻弄され続けたチンパンジーの数奇な運命 第二夜

人間の都合のために生涯を翻弄されたチンパンジー、「ニム」の物語第二夜です。下記は前回のはなし。

rubirubi.hateblo.jp

 

 

それでは、始まり始まり~♪

 

Introductory Remarks

写真はイメージです

こんばんは、皆さん。また新しい夜が訪れ、私がまた、語りかけていきます。

前回の第一夜では、チンパンジーのニムが人間との接触を通じて手話を学び、人間の母親と共に成長してきた様子をお伝えしました。今夜は、彼の物語がどのように進んでいったのか、詳しく探ってみましょう。

 

続く手話の冒険

ステファニーとニム(,,>᎑<,,)*•.❥

純粋に人の世界に馴染み、ステファニーを実の母親と信じるようになっていったニム。生後2か月を過ぎた頃、ニムは手話の学習を開始しました。手話を覚えるたびに褒められ、ご褒美が与えられるという方法で、彼は徐々に手話を習得していきました。

この方法が功を奏し、彼のコミュニケーション能力が次第に成長していく光景は、まるで奇跡のようでした。

しかしある日、ステファニーがニムの学習の記録を取っていないことが明らかになりました。ステファニーの言い分は、「やることが多すぎて、記録を取る時間がない」というものでした。

この時テラス博士は焦りを感じていました。研究のための予算が承認されず、成果を早急に出さなければ研究を続けることが難しくなる可能性があったのです。

 

繰り返される"別れ"

このままステファニーの家でニムを育てると研究の妨げになると考え、博士は新たな母親をニムに選びました。その母親となるのは、プロジェクトに協力していた学生のローラでした。

こうしてニムは、1年半もの間過ごしたステファニーとあっさり引き裂かれ、新しい母親と共に過ごすことになったのです。しかしこの変化によって、彼の生活は大きく変わっていきました。

新しい母親のもと、ニムはコロンビア大学が所有する、ニューヨークにある広大な一軒家で暮らすこととなりました。新たな環境に適応するのに戸惑いながらも、ローラは彼に人間の生活を教えることに力を注ぎました。

洋服を着て、人間と同じ食事を摂り、おしめを使い、トイレを利用することまで。彼の生活は一変しました。こうしてニムは、本来あるべき姿とは離れ、人間の文化に馴染んでいったのです。

Nim signing with Laura-Ann Petitto. Nim signing with Laura-Ann Petitto.Susan Kuklin

Nim signing with Laura-Ann Petitto. Susan Kuklin

ローラは手話の教育のため、新たな部屋も作りました。この部屋は飾りひとつなく、集中力を高めるのが目的です。でも最初は初めて入る狭い部屋にとまどい、不安からか、ニムはなかなか手話を覚えようとしませんでした。それでもなるべく多くの言葉を覚えさせるため、手話の教育は大学でも毎日行われました。

ですがやがて少しずつ、ニムはローラを信頼し、遊びながら手話を学ぶようになりました。そして、彼にとって本当の母親はローラである、と信じるように心を開いていきました。

 

プロジェクトの終焉

”プロジェクト・ニム”は徐々に進行し、成果が上がっていきました。新聞や雑誌にも取り上げられ、ニムはテレビ出演まで果たし、全米で話題となりました。ニムは一躍スターとなり、すべてが順調のはずでした。 しかし、それも束の間、プロジェクトはまた新たな局面を迎えます。

ローラがハーバード大学院に合格し、ニューヨークを離れることになったのです。またしてもニムは母親と別れなくてはならなくなりました。ニムは実の母、ステファニー、そしてローラと、ここまで生後わずか3年の間に、3度も母親と引き離されたことになります。

Nim Chimpsky and Laura-Ann Petitto. Photo credit: Herbert Terrace.

Nim Chimpsky and Laura-Ann Petitto. Photo credit: Herbert Terrace.

そしてここで衝撃の事件が起きます。ローラが家を出ようとした時、突然、ニムがローラを襲ったのです! ニムは母親であるローラが自分から去ろうとしている気配を感じ、それを止めようとしたのでしょうか…。

プロジェクトは新しいスタッフに引き継がれ、ローラは去りました。この別れの後、ニムは母親を次々と失った不安と怒りのせいか、急速に変化を遂げ、凶暴さを増していきました。研究チームは手話の学習どころか、彼とのコミュニケーションまで難しくなっていくのです。

そしてローラの離脱から1年が過ぎようとする頃、またしても悲惨な事件が起きてしまいます。スタッフの一人がニムに襲われ、彼女は顔に大けがを負ってしまうのです。…この事件を受け、これ以上研究を続けるのは危険と判断し、テラス博士はプロジェクトを解散することにしました。しかも、そこで博士は驚きの発見をすることになります。

 

手話の意外な真実

実験は終わっても、今まで集めた膨大なデータがある。テラス博士は良い結果が導き出せることを確信していました。ですが実験の映像を見直す中で、博士はある盲点に気付いてしまいます。

手話を教えている映像において、それは一見、ニムと研究員が手話で会話をしているように見える。しかし研究員たちはニムがサインをする前、無意識にニムにして欲しいサインを出してしまっていることがわかったのです。手話を覚えることでご褒美を得られることを学んだニムは、研究員のサインを模倣していただけで、自発的なコミュニケーションではなかったという結論に達します。

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この発見を受けて、プロジェクト・ニムは終了となりました。4年10か月という時間を経て、この驚くべき実験は幕を閉じることとなりました。その結果からは、どんな洞察が得られたのでしょうか。

 

第ニ夜の要約

  • ニムが生後2か月から手話を学ぶ実験が行われる。
  • 手話の学習には”褒め”と”ご褒美”が使われる。
  • ニムの記録の不足と研究予算の問題が実験に影響を与える。
  • 学生ローラが新しい母親として選ばれる。
  • ローラは人間の生活をニムに教育する。
  • ニムは環境の変化に適応しようとするが、凶暴化が起こる。
  • 手話の使用の事実が判明し、プロジェクトは終了。

第ニ夜では、「プロジェクト・ニム」と呼ばれる実験に焦点を当てています。最終的に、手話の使用がご褒美に関連していることが発覚し、プロジェクトは終了してしまうところまでが今夜のお話しでした。

 

今宵はこの辺で

さて、今晩のニムのお話はここまで。この第二夜でも、琴線に触れる瞬間がいく度もありました。人に翻弄され、ただけんめいに生きるニム。プロジェクトは終了したにもかかわらず、今後また新たな試練がニムに降りかかります…。

次回の第三夜でまたお会いしましょう。お楽しみに!
それでは♪ さいごまでお読みいただき、ありがとうございました~(๑•ᴗ•๑)♡

 

 

ニムの生涯を追ったドキュメンタリー。
(英語版のみです)

 

リメイクではない猿の惑星、2011年の作品。
ニムの生涯がヒントになったそうです

 

町山智浩さんの解説

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