『Project Nim』ニムの感動の旅 : 人間に翻弄され続けたチンパンジーの数奇な運命 第三夜
人間の都合のために生涯を翻弄されたチンパンジー、「ニム」の物語第三夜です。下記は前回のはなし。
それでは、始まり始まり~♪
Introductory Remarks
こんばんは、皆さん。また新しい夜が訪れました。お気に入りのふわふわなブランケットに包まって、心温まる、友情と強さに満ちたチンパンジー・ニムの物語に浸ってみましょう。
前回の第ニ夜では、「プロジェクト・ニム」と呼ばれる実験が終了するところまでをお伝えしました。
しかも最終的にニムの手話は、ご褒美に関連して研究員を模倣していただけだったと結論付いたのです。
今夜も彼の物語がどのように進んでいったのか、探っていきましょう。
失われた帰還:未知のジャングル
人生は予測不可能な出来事で満ちています。ニムの旅もまた同じです。実験が終了し、テラス博士はニムを霊長類センターに戻すことを決めました。皆さんは、これがハッピーエンドだと思うかもしれません。ニムが仲間たちと再会し、ジャングルで夢を追う姿を思い浮かべることでしょう。しかし、もう少し待ってください。この物語は思いも寄らない方向に進んでいきます。
想像してみてください。ニムは、5年近くの間、人間の子供として育てられた後、突然野生のチンパンジーの生活に戻されました。快適なベッドもなく、しつけを学んだきれいなトイレも無い。食事もチンパンジー用の餌を入れたボウルだけが与えられる。まるで誰かを都会からジャングルに放り込むようなものです。ニムはほとんど食べず、苦しんでいました。
ボブ・インガーソル
そんな過渡期に、ある男性が立っていました。名前はボブ・インガーソル。彼はその施設で働いており、テキサス州ほどもある大きな心を持っていました。
ボブが見ていたのは、ニムの中にある人間らしい側面でした。ただし、ここで面白いのは、ボブにはニムがまるで正しく着られないシャツのようだった、ということです。近いけれども遠い存在なのです。
ボブは、檻に閉じ込められたチンパンジーにとって、自由は物理的なものだけでなく、心の中でも大切なものだと信じていました。それで、彼はニムを毎日森に連れて行くことを始めました。野生の魂を再び呼び起こすための試みです。
しかしニムが最初に興味を示したのは、木々やささやかな風景ではなく、かつて慣れ親しんだ人間の心地よさでした。ボブのシャツを着たがり、椅子に腰かけようとするのです。人間としての生活にすっかり馴染んでしまっていました。
ボブには自身の物語もありました。彼は過去に家庭の事情で度々引っ越しを繰り返し、学校になじめず孤独な生活を送ってきました。だからこそ、彼はニムの孤独を理解し、共感したのでしょう。そして、ボブはボブの過去の経験が、ニムの苦しい状況と重なることに気づいたのです。そのため、ボブはニムがチンパンジー本来の姿を取り戻して欲しいと強く願い、献身的に尽くすことになります。
手話で話したニム
そんなある日、奇跡が起こりました。なんと、ニムが手話で「遊ぼう」とボブに伝えてきたのです!信じられますか?
ついに、ニムが自らコミュニケーションをとる一歩を踏み出したのです。そして、それからは、ニムの動きに変化が現れました。ニムは徐々に、本来の野生の本能に復していったのです。テーブルで食事をし、コップで水を飲む姿―そんな姿が、まるで想像もつかないようなものでした。
ニムと遊ぶボブ
ただし、物事はそう単純には進みません。ニムには課題が山積みでした。チンパンジーは本来、仲間と共に生活する動物です。しかしこれまで人間としか接触したことがなかったニムは、他のチンパンジーを怖がり、近づこうとしません。
それでも、ボブはあきらめませんでした。彼は他のチンパンジーのそばに座り、優しく声をかけました。「おいで~」と。そして粘り強く待ちました。
するとやがて…、ニムは他のチンパンジーのそばに座りました。さらに、檻越しであれば遊べるほどにもなっていったのです。
破れ去った絆と命の危機
次に起こる出来事は…信じられない失望です。お気に入りのポップコーンの手も止まってしまうことでしょう。こころの平静を保つ準備をしてください。
ボブとニムは、ふたりで欠かせない存在になりました。森の散歩は、徐々に互いにとっての貴重な瞬間となっていきました。5年間が過ぎ、ボブはニムと真の友情を築いたと感じていました。しかし、嗚呼、人生には思いがけない出来事が待っています。
思い描いてください。ニムの家であるオクラホマ大学 霊長類センターは深刻な危機に瀕していました。資金が不足しており、ニムは売られてしまう寸前でした。売られるとは、まるで中古車のように扱われることです。ボブは必死で抵抗しましたが、ニムはボブとの絆を引き裂かれ、新しい場所に送られる運命をたどりました。
皆さん、驚いてください!ニムはなんと、ニューヨーク大学 霊長類研究所というところに連れて行かれました。ここでは、何十匹ものチンパンジーが新薬の実験台として利用されていたのです。信じられますか?私たちの愛すべきニムが、科学実験のための実験材料として扱われるなんて…。
今宵はこの辺で
このまま席に座っていてください ♪(❛ᴗ❛ و(و˚˙
この物語はまだまだ終わりません…。次の第四夜をお楽しみに。ニムが直面した困難、予測できない展開が待っています。
それでは、人生は驚きに満ちていることを忘れずに。またお会いしましょう~(๑•ᴗ•๑)♡
ニムの生涯を追ったドキュメンタリー。
(英語版のみです)
リメイクではない猿の惑星、2011年の作品。
ニムの生涯がヒントになったそうです
町山智浩さんの解説
サントラもありました