『Project Nim』ニムの感動の旅 : 人間に翻弄され続けたチンパンジーの数奇な運命 第五夜

ついに、物語の最後の章が幕を開けます。人間の都合で運命を翻弄されたチンパンジー、"ニム"の旅路もいよいよ最後の夜です。前回のはなしは下記に。

rubirubi.hateblo.jp

 

 

それでは、始まり始まり~♪

楽しく踊る動物たち
らんらんらん、たのしみだな~

 

旅の終わり

写真はイメージです

こんばんは、皆さん。また夏の夜がやってきましたね。夏の夜の風に吹かれながら、心温まる物語をお届けします。星々が瞬く夜空の下で、チンパンジー・ニムの感動の物語に耳を傾けてみませんか?笑 ♪(❛ᴗ❛ و(و˚˙。何気ない一時に、彼の冒険と友情が心に響いてきます。

前回、ニムは資金難により売り飛ばされ、あやうく動物実験に巻き込まれかけたところ、ボブの奮闘により命からがら救出されました。しかし、帰る場所はなく、孤独という新たな試練に襲われます。新しい友情で回復への道を歩み出したころ、また新たな訪問者がニムの運命を翻弄します…。

今夜は最終夜。その先に待つ結末、そしてニムの心の声に耳を澄ませましょう。皆さんのお気に入りの場所で、心地よい時間を楽しんでください。

 

風のささやき

夕日の静かな光が美しい大地に優しく降りそそぎ、牧場の風は心地よく吹き抜けていく。長い歳月が流れ、主人公ニムの物語に新たな章が刻まれる。孤独と戦い、心の中に深く刻まれたボブの面影。あの愛しい友の思い出が、空気に宿り、土地に息づいているような気がする。

運命の糸が再び交差する瞬間が訪れます。その日、静かな牧場の風景に一人の女性が現れました。彼女こそが、かつての母親代わりであり、ニムに温かい母乳を与え育てたステファニーでした。

しかしその再会は、驚きと衝撃とで満ち溢れ、予想もしない展開へと進んでいく。突然、ニムはステファニーに襲いかかりました。混乱の中で命が危うくなる。

 

感情の渦

牧場のスタッフが駆けつけ、ニムを射殺すべきだという中、うずくまるステファニーをニムはじっと見つめました。その瞬間、ニムの目には悲しみが宿り、そして彼女から離れました。

傷ついて地に伏すステファニー。その表情から何かが伝わってきたのです。

人間の家庭で育ち、手話を教えられた日々。

母親と信じていたステファニーとの突然の別れ、研究熱心なローラとの手話の日々。そして再び故郷に戻り、新薬の実験台にされる寸前、救出されたものの、待っていたのは孤独な農場の生活。生まれてわずか7年足らずの波乱に満ちた人生。ニムは人間の都合に振り回され続けました。

 

ボブの旅のはじまり

この一夜の出来事を通じて、わたしたちはニムの心の中に秘められた複雑な感情に触れました。しかし彼がステファニーに襲いかかった理由は、正確には分からないままです。再び人間の世界に引き戻されることを恐れたのか、それとも過去の出来事への感情が彼を支配したのか。自分を振り回した人間への復讐心か。 ですがその瞬間、彼の心には何かが揺れ動いたことは間違いありません。

ボブはこの事件をきっかけに、類人猿の研究者になるという夢への思いが変わり、動物保護の活動を始める決意を固めました。新しい道を歩むことを父親に告げ、実家近くの土地でチンパンジーを受け入れる準備を整え始めたのです。

 

光陰の紲、冥の再会

そして―。光陰矢の如し、ニムが牧場に移されて10年の歳月が過ぎた頃。そんなある日、牧場のスタッフからボブに連絡がありました。もう一頭のチンパンジーが亡くなり、ニムは再び孤独な生活を送っているとのことでした。

幸運なことに、新しい管理者に代わり、再会を許可してくれることになりました。しかしこの10年という年月は長すぎました。ボブがニムを思い出すのか、彼を受け入れるのか、あるいは再びステファニーのように攻撃を仕掛けるのか。未知の展開が私たちを待ち受けていました。

 

邂逅

ボブとニムの再会がやってきました。その瞬間、心が震え、時間が止まるかのようでした。心臓が高鳴る中、彼らは互いに目を合わせました。そして、驚くべきことに、ニムが取った行動は…。

なんと、ニムからボブに近づき、手話で「遊ぼう」、と、ボブに語りかけたのです。その手話が物語るのは、言葉よりも深い感情。ニムは過去の出来事を胸にしまい込むことなく、心の中でボブとの日々を守り続けていたのです。互いの友情に満ちた日々が、時間を超越して今も色あせず、彼の心にしっかり刻まれていたのです。

 

ひとひらの肖像

さて、ここに一枚の写真があります。それは、ボブが最も愛してやまない一枚です。その写真には、ニムの心情が刻まれています。ニムがボブに傷を負わせた際、彼はすぐにそれに気づき、手話で「ごめんなさい、ごめんなさい…」と謝罪しました。そしてボブの怪我を気遣い、確認するという優しさを示したのです。

人の欲や身勝手さに振り回され続け、悲運な生涯を辿ったニム。しかし、彼とボブの絆だけは変わることがありませんでした。ボブはこう語りました。

「ニムの心とずっと一緒にいたからだと思います。研究者としてではなく、友人として彼の傍にいました。彼になにかを求めるのではなく、彼に必要なことを常に考えていました、なぜならそれが、僕にとって何よりの楽しい時間だったからです。」

動物実験の必要性に疑問を持ちながらも、私たちは動物たちの心を思いやることを忘れてはなりません。テラス博士の「ニム・プロジェクト」は、単にチンパンジーの研究以上のものでした。それは人間の欲望と行動を浮き彫りにしたものでした。

 

ニムのともしび

ボブとの再会を果たし、新しいつながりもニムに訪れました。他の仲間たちと共に、自由な群れの中で暮らし始めたのです。ニムにとってはようやく、チンパンジーとして当たり前の生活を手に入れました。

しかし程なくして、ニムのその波乱に満ちた生涯に幕が降ろされます。寿命は50歳と言われるチンパンジーですが、ニムは2000年の3月10日、26歳という若さでこの世を去りました。

人に翻弄された人生がニムのいのちを縮めたかは定かではありませんが、心臓発作によるとつぜんの旅立ちでした。それはボブがニムのために準備を始めたチンパンジーの施設が完成する前のことでした。

…ですが今、施設には100頭以上のチンパンジーが住んでおり、彼らは平穏な日々を過ごしています。ニムの数奇な運命と感動の旅が、動物たちの未来を明るく照らしているのです。

 

星になったニム

この物語は、人間と動物の絆がどれほど尊いものであるかを、私たちに教えてくれます。ニムの心の中には、いつまでも色褪せないボブとの楽しい思い出が刻まれていました。彼の物語は、永遠に続く美しい情景を私たちの心に描き出してくれるのです。

風が優しく吹き抜ける牧場に、今もニムの魂がそっと息づいています。彼の足跡は、風のささやきとなり、大地に寄り添っています。

ニムの人生は、研究の枠を超えて、友情と愛情によって美しく彩られました。その一瞬一瞬が、私たちに大切な教訓をもたらしてくれました。動物と人間の深い絆を胸に抱きながら、未来への歩みを続けるのです。

ニムの物語は、ただの過去ではありません。それは、私たちの心に生き続け、感動的な情景を彩ります。人間と動物の関係が紡ぐ奇跡の糸が、未来に向けて輝く導きとなることでしょう。

 

おしまい| •ᴗ• )੭⁾⁾フリフリ

―『Project Nim』ニムの感動の旅 : 人間に翻弄され続けたチンパンジーの数奇な運命

 

 

ニムの生涯を追ったドキュメンタリー。
(英語版のみです)

 

リメイクではない猿の惑星、2011年の作品。
ニムの生涯がヒントになったそうです

 

町山智浩さんの解説

 

My Story Ends

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  • Dickon Hinchliffe
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