「天才ザル・カンジくん」驚異・類人猿の知能【NHKスペシャル】奇跡のボノボ、カンジ 第2夜
はじめに。つぶやきと前回の続き
『奇跡のボノボ、カンジ』と勝手に銘打って(笑)つぶやいている2夜目です。
前回途中までお話したNHKスペシャル、『天才ザル・カンジくん。驚異・類人猿の知能』という番組紹介のつづきをどうぞ。
ボノボとは、ヒトにもっとも近い生きものと言われています。
ただチンパンジーとともに、よく言われる遺伝子の99%が一致する、という件ですが、これについては今となってはもはや神話的なもののようです。
これはこれで調べると奥が深いし興味深いので、このあたりはまた別途、記事で書きたいです~
1993年に放送された番組の見出しは下記のとおりで、驚異!とか何となく昭和感があっていいですね~(笑)川口ひろし探検隊とか。懐かしいです。
- 驚異!類人猿ボノボの知能
- 覚えた英語は1000語
- 音の出るキーボードで人間と会話
- テレビゲームに挑戦
- 10年間の研究成果
語り 柳生博さん
ただ、実際の番組の内容は興味を惹くために誇張したタイトルという訳でもなく、今でもドキュメントながらドラマチックでもあり、ハートフルでもあり、、非常に面白いです。むしろ今のテレビより当時のほうが面白かったのかもしれませんが…。 ってこと~ ┐(゚~゚)┌
前置きが長くなりましたが、、前回はチンパンジーに言葉を教える研究が1954年にはじまったものの、6年もの努力の末不明瞭な”パパ・ママ・カップ”という3つのことばを発するのみに終わった、というところまででした。
チンパンジー、手話を学ぶ?
しかしこの失敗から19年後、こんどはアメリカの心理学者ガードナー夫妻がチンパンジーの訓練を再開しました (この手の研究は心理学者界隈が多いです)。チンパンジーは人間のような発声ができないと考えていたガードナー夫妻は、別の方法を考えたのです。
その方法とは、手話を生後8ヶ月のチンパンジー、ワショーに教えるというものでした。たとえば、ワシューが両手を頭の上で組むのはもっと何かして欲しい、という意味です。そのようにワシューは85種類の手話を覚え、当時チンパンジーの研究をしていた世界中の学者に大きな衝撃を与えました。ビアトリス・ガードナー博士(ネバダ大学)は、
「チンパンジーは手話で私たちに話しかけることができたのです。彼らの手はとても器用で、手話には最適でした。 ですから手話は、コミュニケーションの方法としてとても便利なものでした。」
と発言し、おおきな話題となりました。
衝撃の結論
ところが、です。1979年、こうした手話の研究成果を根底から覆す衝撃的な論文が発表されました。
コロンビア大学のハーバード・テラス博士(こちらも心理学者です)は、
「チンパンジーはただ手話を真似していたことが分かりました。彼らに手話で質問したとき、彼らは同じサインか似たサインを真似して返しているだけなのです。」
と声明したのです。
テラス博士は、自分で研究していたチンパンジーの手話を細かく分析し、この結論に達したそうです。この論文がきっかけとなり、チンパンジーに言葉を教える研究はその後衰退していきました。
テラス博士はチンパンジーの知能や手話を習得することに、決して否定的ではなかったのですが、彼なりの研究結果として、そう結論せざるをえなかったようです。
このあたりは2011年に公開されたドキュメンタリー映画、『プロジェクト・ニム』で詳しく語られているようです。
人間に翻弄された人生?『Project Nim』 - THE RECKLESS MAN*
感動し、考えさせられました。
2023/08/02 15:22
新たな試み
しかし、チンパンジーに言葉を教えるという夢をその後も追い続けていた研究グループがありました。それが番組冒頭でも紹介された、ジョージア州立大学言語研究センターの研究者たちです。
この物語のもうひとりの主役、スー・サベージ=ランボー博士は、ボノボを使って言語研究を行った最初の科学者で、カンジくんが生後間もない頃から見守ってきた育ての親でもあります。スー博士と仲間の研究員たちは、人間のマネができない条件でチンパンジーに言葉を教えようと試みました。
訓練により、チンパンジーに写真を見せ言葉を教える実験のようすが、映し出されます。チンパンジーはヘッドホンをつけ、見えないところにいる質問者からの声を聞き、写真を選びます。
質問者は「蛇」と伝えましたが、チンパンジーが手にしたのはチョコレートでした。チンパンジーは、人間の言葉を理解できていないようです。ですが目の前で質問をすると…。
スー博士「スネーク、スネーク(蛇、蛇)」
(ヘッドホンを外したチンパンジーが正解する)
しかしもう一度、チンパンジーにヘッドホンをつけ、はなれた場所から同じ質問をすると…。チンパンジーが取ったのはチョコレートでした。
(またチンパンジーの目の前で)
スー博士 「アップル、アップル」
(ヘッドホンを外したチンパンジーが正解する)
スー博士も苦笑い?しています。チンパンジーはヘッドホンで聞いた声だけだと間違えますが、ヘッドホンを外し、目の前で質問をすると正しい写真を取るのです。それは、人間の視線や微妙な表情を、チンパンジーが読み取っているからなのでした。
研究者と飼育者
場面は変わり、日本の伊豆にあるシャボテン公園の映像です。園内の舞台では、チンパンジーが高い竹馬に乗ったり、おどけた表情で観客の笑いをとっています。芸達者でお茶目なチンパンジーはショーの人気者です。
チンパンジーは本来、極めて高い知能を持った動物です。隠れた才能を引き出してやることで思いがけない能力を見せてくれます。ところが、長年チンパンジーに芸を教えてきた飼育係の人も、こんな話をするのです。
「チンパンジー・ショーを見てるお客様から、チンパンジーはよく言葉が分かりますねぇ、って言われるんです。でもね、本当に言葉を理解しているんじゃなくて、私のいろんな動作、顔色、そういうものとかを総合的に判断して、チンパンジーは言うことを聞いてるような気がするんです。」
- 伊豆シャボテン公園の飼育員、堤秀世さん
では…、あのボノボのカンジは、本当に耳で人間の言葉を聞き取り、理解しているのでしょうか?
おわりに・”kanzi”、スワヒリ語で”埋もれた宝”
わたしたちは現在、さまざまな知識をかんたんに得られます。ですがこれにはたくさんの方々や動物たちの努力と犠牲があったのだと、改めて考えさせられました。
ざんねんながら今回は主役のカンジ君が登場する前に話が終わってしまいました(汗)。次回は彼の幼少期のエピソードや、どのように奇跡の能力を習得したのかについてつぶやきたいと思っています!
カンジ君の物語は続きます。最後までお読みくださって、ありがとうございました。
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