動物の自己鏡像認知について


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こんにちは、今日は、ちょっと変わった話題をお届けします。

動物の自己鏡像認知:謎に包まれた能力の探求

動物は自分の姿を鏡で見て、自分だと認識できるのでしょうか?この興味深い問題について、科学者たちはさまざまな実験を行ってきました。今回は、その中でも特に有名なものを紹介します。
まず、自己鏡像認知とは何でしょうか?自己鏡像認知とは、自分の身体や行動を客観的に観察し、自分と他者を区別できる能力のことです。人間は幼児期からこの能力を発達させますが、動物にもこの能力があるとすれば、それはどのようにして判断できるのでしょうか?
自己鏡像認知の研究において、最も一般的な方法は、マークテストと呼ばれる実験です。これは、動物に鏡を見せて、その反応を観察することです。例えば、動物の身体に目立つ印をつけておき、鏡でそれに気づくかどうかを見るという実験があります。これは、動物が自分の身体を認識しているかどうかを測るための指標となります。
このような実験を行った結果、どのような動物が自己鏡像認知を持っていると考えられるのでしょうか?実は、これまでに確認されているのは、人間以外ではチンパンジー、オランウータン、ゴリラ、イルカ、ゾウ、カラスなどの一部の高等動物だけです。これらの動物は、鏡で自分の印を見つけて触ったり、自分の顔や身体をじっくり観察したりすることが観察されました。一方、犬や猫などの多くの動物は、鏡に映った自分を他の個体と思って吠えたり威嚇したりすることが多いです。
では、なぜ一部の動物だけが自己鏡像認知を持っているのでしょうか?その理由はまだ完全には解明されていませんが、いくつかの仮説があります。一つは、脳の構造や機能に関係しているというものです。自己鏡像認知に必要な脳領域や神経回路が発達している動物だけがこの能力を持っている可能性があります。もう一つは、社会性やコミュニケーションに関係しているというものです。他者と協力したり感情を共有したりすることが多い動物ほど、自分と他者を区別する必要性が高くなります。そのため、自己鏡像認知も発達しやすくなる可能性があります。

動物行動学から脳神経科学まで

自己鏡像認知の能力は、人間や一部の高等動物に見られますが、その発達やメカニズムについてはまだ多くの謎があります。自己鏡像認知の研究は、心理学、動物行動学、比較認知科学、脳神経科学などの分野で行われています。
先ほどのマークテストは、1970年に心理学者のゴードン・ギャラップJr. (Gordon Gallup Jr.) が開発しました。彼は、チンパンジーが鏡で自分の顔や身体を観察したり、印を触ったりすることを発見しました。これは、チンパンジーが自分の鏡像を自分だと認識していることを示していました。その後、この方法は人間や他の動物にも適用されました。
マークテストで成功した動物は極一部の種に限られています。2016年の時点で、人間(ヒト)を含めた大型類人猿、アジアゾウ、イルカ、シャチ (orca)、カササギがミラーテストで成功していることが確認されています 。2019年には、大阪市立大学が魚類のホンソメワケベラで成功したと発表しました 。一方、サルやイヌなどの多くの動物は、マークテストで失敗しています 。
マークテストは、自己鏡像認知の有無を確かめる手法としては長い歴史を持っていますが、その妥当性については意見が分かれています。マークテストでは、視覚的な情報だけでなく、触覚や嗅覚など他の感覚情報も重要な役割を果たしている可能性があります。また、マークテストでは測れないような自己認知の形態も存在する可能性があります。さらに、マークテストでは個体差や環境要因なども考慮する必要があります。
そこで、近年ではマークテスト以外にもさまざまな方法で自己鏡像認知を研究する試みが行われています。例えば、
- ビデオ映像や写真などを用いて自己像を提示する方法 
- 鏡の向こうにある物体にアクセスできるかどうかを調べる方法
- 鏡像と自分の動きが一致しない場合にどのように反応するかを調べる方法
- 鏡像に対して自己意識や感情を表現するかどうかを調べる方法
- 鏡像に対して社会的な相互作用を行うかどうかを調べる方法
これらの方法は、自己鏡像認知のさまざまな側面や次元を探ることができます。また、自己鏡像認知と関連する脳の構造や機能についても、脳画像診断やミラーニューロンなどの研究が進んでいます 。

自己鏡像認知を持つ動物の多様性と知られざる一面

自己鏡像認知を持つと考えられる動物の具体的な例をいくつか紹介します。
チンパンジーは、人間に最も近い動物として知られていますが、自己鏡像認知も人間と同様に持っています。チンパンジーは、鏡で自分の顔を見て、舌を出したり歯を見せたりすることができます。また、鏡で自分の身体の隠れた部分や傷跡などを確認することもできます。チンパンジーは、自分の印を見つけるだけでなく、他のチンパンジーの印にも興味を示します。これは、チンパンジーが自分と他者を区別し、他者の状態や感情に共感できることを示しています。
オランウータンは、チンパンジーと同じく類人猿の仲間ですが、自己鏡像認知も持っています。オランウータンは、鏡で自分の顔や身体を観察したり、印を触ったりすることができます。また、オランウータンは、鏡で自分の姿勢や動きを調整したり、鏡に向かってポーズを取ったりすることもできます。これは、オランウータンが自分の身体や行動に対する意識を持っていることを示しています。
ゴリラは、類人猿の中でも最も大きく強い動物ですが、自己鏡像認知も持っています。ゴリラは、鏡で自分の顔や身体を観察したり、印を触ったりすることができます。しかし、ゴリラは、鏡に映った自分に対して攻撃的な反応を示すこともあります。これは、ゴリラが自分の地位や威信に敏感であることを示しています。
イルカは、水中に住む哺乳類ですが、自己鏡像認知も持っています。イルカは、水中に設置された鏡で自分の顔や身体を観察したり、印を触ったりすることができます。また、イルカは、鏡で自分の表情や動きを変えたり、他のイルカと一緒に鏡を見たりすることもできます。これは、イルカが自分の感情や社会性に対する意識を持っていることを示しています。
ゾウは、陸上に住む哺乳類ですが、自己鏡像認知も持っています。ゾウは、大きな鏡で自分の顔や身体を観察したり、印を触ったりすることができます。また、ゾウは、鏡で自分の耳や鼻などの特徴的な部分を動かしたり、他のゾウと一緒に鏡を見たりすることもできます。これは、ゾウが自分の個性や関係性に対する意識を持っていることを示しています。
カラスは、鳥類の中でも最も賢い動物として知られていますが、自己鏡像認知も持っています。カラスは、鏡で自分の顔や身体を観察したり、印を触ったりすることができます。また、カラスは、鏡で自分のくちばしや羽などの部分を調べたり、鏡に向かって物を投げたりすることもできます。これは、カラスが自分の特徴や能力に対する意識を持っていることを示しています。

動物と人間の自己意識の違い

自己意識とは、自分が存在することに気づく能力や、自分と他者を区別できる意識のことです。この能力は、人間や一部の高等動物に見られますが、その発達やメカニズムについてはまだ多くの謎があります。動物と人間の自己意識には、次のような違いが考えられます。
- 自己意識の程度や種類
- 自己意識の発現や表現
- 自己意識の影響や効果
まず、自己意識の程度や種類についてです。人間は、自分の身体や行動を客観的に観察し、自分の思考や感情を言語化し、自分の過去や未来を想像することができます。これらは、高度な自己意識の表れと言えるでしょう。一方、動物は、自分の身体や行動を鏡で認識したり、自分の名前を覚えたり、自分のニーズや欲求を示したりすることができます。これらは、基本的な自己意識の表れと言えるでしょう。しかし、動物にも人間にも共通する自己意識の要素もあります。例えば、自分と他者を区別する能力や、自分の存在を主張する能力などです。これらは、生存や社会性に必要な自己意識の要素と言えるでしょう。
次に、自己意識の発現や表現についてです。人間は、言語や文字などを用いて自己意識を発現や表現することができます。例えば、「私は~だ」と言ったり、「私は~を感じる」と書いたりすることができます。これらは、自己意識を明確に伝えることができる方法と言えるでしょう。一方、動物は、声や身振りなどを用いて自己意識を発現や表現することができます。例えば、「ワンワン」と鳴いたり、しっぽを振ったりすることができます。これらは、自己意識をある程度伝えることができる方法と言えるでしょう。しかし、動物にも人間にも共通する自己意識の発現や表現もあります。例えば、目線や表情などです。これらは、自己意識を直接的に伝えることができる方法と言えるでしょう。
最後に、自己意識の影響や効果についてです。人間は、自己意識によって自分の行動や判断を変えたり、他者との関係を築いたりすることができます。例えば、「私は~だから~する」と考えたり、「私は~だから~さんと仲良くなりたい」と思ったりすることができます。これらは、自己意識が行動や判断に影響を与えることや、他者との関係に効果をもたらすことを示しています。一方、動物は、自己意識によって自分の行動や判断を変えたり、他者との関係を築いたりすることができますか?これは、動物の種類や個体によって異なると考えられます。例えば、チンパンジーやイルカなどの高等動物は、自己意識があることを示す行動や判断をしたり、他者との協力や競争をしたりすることが観察されています。これらは、自己意識が行動や判断に影響を与えることや、他者との関係に効果をもたらすことを示しています。しかし、イヌやネコを含む多くの哺乳類や他の生物は、自己意識があることを示す行動や判断をしたり、他者との協力や競争をしたりすることが観察されていません。これらは、自己意識が行動や判断に影響を与えないことや、他者との関係に効果をもたらさないことを示しています。
以上のように、動物と人間の自己意識には違いがありますが、それぞれに共通する部分もあります。

まとめと感想

以上、自己鏡像認知を持つと考えられる動物の例を紹介しました。これらの動物は、人間と同じように自分の存在やアイデンティティについて考えることができるのでしょうか?それとも、人間とは異なる方法で自分や他者を認識しているのでしょうか?
自己鏡像認知は、動物の心理や感情に関する重要なトピックです。動物が自分や他者をどのように認識しているかを知ることで、彼らとより良い関係を築くことができるかもしれません。また、人間自身の自己意識やアイデンティティに関するヒントも得られるかもしれません。自己鏡像認知の研究は、まだまだ解明されていない謎が多く、今後もさらなる研究が期待されます。

これからも面白くてためになる話題をお伝えしていきますので、ぜひご覧ください!

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